2. ケーススタディ <質疑応答集>
①クッションLPとCVRの関係
Q.
クッションLP(記事)はどういった場合に挟み込むことが多いですか?
たとえばキーワード広告ならば記事LPは挟まなかったり、ディスプレイでも挟まないことも多いのでしょうか?
事例ですと、1/3くらいが商品LPへと進んでいますが、3/3を商品LP(記事挟まない)へ流し込むのは往々にしてCVR悪化につながりやすいのでしょうか?
広告媒体視点ですと、クッションLP・ブリッジLP(記事やアンケートなど)は、ディスプレイ広告の場合に挟み込むことが多いです。
一方で、「キーワード広告(検索連動型広告)ならば記事LPを挟まない」や「ディスプレイ広告ならば記事LPを挟む」などが絶対に成果が高いかというとそうではなく、どのような認識(Perception)を持った、どんなユーザー(WHO)に対して、どのような態度変容を狙うかによって、ケースバイケースとなります。
ユーザー(生活者)起点で考えると、ディスプレイ広告やSNS広告は、生活者が日々のルーティンや娯楽のためにネットサーフィンをしている時間・シーン・スマホの画面に映らせていただく(お邪魔する)という感覚に近いものがあり、何かを買ったり導入を決めたりする心持ちでいるとは限りません。このような切り取られた瞬間(Moment)に出会っていきなり「買ってください」で人の心は動きにくいため、心理的ハードルを下げるために便宜上、変換装置を作る必要があります。
ではどういった変換装置が必要なのか、どういった広告・LPが必要なのか、生活者の1日や1週間など切り取った期間(もっと広く言うと、一生のうちの経験などの成功体験・失敗体験)のストーリーを整理した際に、「ではディスプレイ広告やSNS広告だとクッションはあった方が良いのではないか」という仮説が生まれます。
その上で、クッション施策が正しいかどうかを「クッション施策実施前/後」の期間を切り取り相対的に数値比較を行うことで、「施策が正しかったのか/正しくなかったのか」という議論の土台を作ることができます。もしすでにクッション施策を行っており、その成果評価にお悩みの場合は、まずは当初の施策仮説の整理や、数値の期間比較を行ってみるのはいかがでしょうか。
Web広告の手法(ハウツー)起点で考えるなら、もはや常識的な動線があるのかもしれません。しかし、配信面から動線を考える際に必ず押さえておきたいのが、自社プロダクトやサービスにとって「どのような競合が、誰に向けて、どんな広告を、どのような動線で集客をしているのか」を複合的に捉えて、動線の採用を判断すべきだと弊社は考えています。
なぜなら、LPへ到達するまでにユーザーは日々様々な情報に触れるため、LPに記載されている情報だけで意思決定をしているわけではありません。知人からのススメや自らの失敗体験などの外部要因が強く影響しています。その上でなんとか獲得をしていかなければならないわけですので、なるべく多くのユーザーの生活情報をキャッチアップし、自社のプロダクト・サービスがユーザーにとってどんな価値だと評価されているのかリサーチや仮説の改善を繰り返し、需要をキャッチアップすることが不可欠となります。
極論、「この広告媒体(メディア)だから必ず記事があった方がCVRが高くなる」という結果が保証されているのでは、その市場にいる全社が最大の利益を上げていることになるはずですが、事実としてそうはなっていませんので、仮説を持った上で細かく検証していく他に方法はありません。
②成果を長引かせるには動線のボトルネックを探し続ける
Q.
ABテストのCVR改善成果はどれくらい持続するでしょうか?
成果数が5倍になっても1ヶ月間だけだった…というコトもよくあったりしますか?
半年間持続するケースもあれば、1ヶ月足らずで終わることもあります。そして施策を行ったが思ったよりも改善がしないケースがあることも私たちは経験しています。コンテンツに対するABテストは、納品して運用開始する時点で勝負が始まりますが、一方でコンテンツの完成度として納品時よりいわば「時が止まった状態」です。
一方で、市場の競合状況やユーザーが接する情報は絶えず変わります。BtoCであれば流行や競合の話題性で簡単に顧客は取られてしまいますし、BtoBであれば社内予算の都合や課題の緊急性によって発注を見送ることもあります。
このようにコンテンツがWebユーザーの「誰か」に接点を持つまでに辿る変数がそもそも多いわけですから、絶えず数字の変化率を定点観測して、ユーザーをコンテンツにFIT(合致、マッチング)させるのか、コンテンツをユーザーにFITさせるのか、いわゆるテコ入れの判断を断続的に行っています。
③LPの離脱率の基準はどう考えるべきか
FV(ファーストビュー:LP訪問時に表示されるキービジュアル)残存率が80-90%前後、SV(セカンドビュー:LPの長さの約半分の位置)の残存率が70%であれば高いと言われています。ただ、流入導線ごとに見ていくと、例えばディスプレイ広告経由のFV残存率は20-30%であることもあり、一概に何%が良いか悪いかとは言えないケースが多くあります。これらの悩みは、何で評価するのか、という軸で見ていくと解決します。先ほどのディスプレイ広告の例ですと、おそらく他の広告媒体よりCPC(クリック単価)が低いはずですから、広告評価上は「流入増加の費用対効果が良い」と判断できるでしょう。
この評価をLPと連続して考えた際に、指標とする値は率ではなく実際の数字を見るべきで、離脱率(レート)ではなく、離脱数(実数)で考えると他媒体との比較がしやすくなります。一般的にFVで離脱しなかったユーザーは自分にとって必要な、何かしらの情報を探すためにLPに残ってくれていると考えられますから、ではどこで離脱しているのか?何をよく読んでいるのか?その行動とCVRに相関関係はあるのか?という考察をすることができます。
その結果、他媒体と比較してディスプレイ広告の残存数が少なく、かつ広告成果としてCV数が比較的低い、という結果であれば、ディスプレイ広告の広告導線(ストーリー、文脈)を見直す必要があります。
一方で、他媒体と比較してディスプレイ広告の残存数が多く、かつ広告成果としてCV数が比較的高いということであれば、ディスプレイ広告は他媒体と比べて比較的CV数の増大に寄与していると言えます。
こう考えてみると、離脱率の良し悪しは一時的な評価フィルターとして機能しない場合がありますので、弊社としては慎重に見ることが多いケースがあります。
④手法先行論ではない改善・企画の切り口を打ち出すには、市場の動向を探りインプット量を増やす
Q.
コンプレックス商材のように競合商材や参入者が非常に多い(個人アフィリエイター含め)と、ABテストでの効果や記事・FV企画に苦慮することはございませんか?
企画の切り口や改善への仮説が立てにくい場合はどう対応されることが多かったですか?
弊社では、企画の切り口や改善への仮説は必ず立てるべきものだと考えているため、膨大な数の調査や商品設計理解を行い、コンテンツの新規創出によって解決する問題なのか、プロダクトやサービスのコンセプトの切り口の変更によって解決できる問題なのかを丁寧に紐解いていきます。リサーチを繰り返すと、あるユーザー群にとってはコンセプトがFITし購入要因となっていても、別のユーザー群では購入要因とならないことがわかってきます。そうすると無限に広告の訴求案やコンセプトの切り口、コミュニケーション案が出てきますが、たくさん出てくることと実際に売れるかは別の問題として捉えます。そのため、数を収集した上で、どの施策を行えば短期的な目標到達にとって有効なのか、また中長期的な施策として種まきをすべき施策は何なのかを慎重に判断し、その結果、今試すべき手法がABテストなのかFV企画なのかを見定めていく順番で考えています。
「ABテスト」「FV企画」という視点だと手詰まりになることが多いと弊社も実感しているため、まずはとにかくインプット量を増やし、市場の動向を探る他ありません。
その上で、現場担当者様としてはとにかく成果を早く上げなければなりませんし、事業としても1日に1万円でも多く売り上げを上げたいという局面であるケースもありますので、状況に応じて上記の順番を組み替え、ご提案を進行するようにしています。
1人として同じ人がいない。1つとして同じプロダクト・サービスは無いはず。
余談です。ご質問をいただいた意図と少し異なるかもしれませんが、売れていると言われている競合他社と近しいプロダクトを作り、また手法(ハウツー)も全く同じ広告手法で実施したが、利益が上がらず成果が良くない、というご相談をよく頂きます。
商品設計やコンセプトが競合と全く同じ場合は商品事実として差分がなくユーザーは迷ってしまいますし、そもそも「迷う=感知する」以前に、届ける前に競合の手法の中に自社の手法が埋もれてしまいユーザーには感知すらしてもらえないこともあり得るかもしれません。露出し接点を増やしながら、商品設計の見直しやコンセプトの再定義を行うことで、自社のプロダクト・サービスだからこそなし得る価値を再定義することが可能になります。
もし今うまく行っておらず手法で苦慮する際は、「すでに自社戦略の中で決めている・決まっている情報を再度洗い出してみる」「商品設計やコンセプトを再検討する」などを実施することで、投資ではなく無駄にしてしまっている広告投資やコンテンツ投資を早期に見直すことができるかもしれません。
⑤広告動線ごとにコミュニケーションを個別最適していく施策は最善策なのか
Q.
事例では医師監修が強みとしてクローズアップされましたが、こういった商材の強みが10個もあった場合は、それだけの種類のLP、記事LP、バナーなど作り込んでいくのでしょうか?
必要に応じて弊社でも実施することがありますが、中長期的に長く配信することは少なく、一時的に行う施策としての位置付けで考えています。
理由は2つあり、1つ目は運用型広告の場合、媒体側で自動最適がかかるためそもそも多くの広告クリエイティブを同時に配信しても、表示回数に偏りが出るケースがあります。自動最適をオフにして手動にて満遍なく配信をコントロールできるケースもありますが、媒体予算など配信における様々な制約があり、長い期間は実施が難しいことがあります。
2つ目は、市場の需要を測定するために短期的なテストとしての位置付けで行い、得られた知見から新しい仮説や訴求軸を打ち出す方法です。
具体的には、あるセグメント・クリエイティブのいわゆる「1つのニーズ」に対して「1つのバナークリエイティブ」、「1つのLP」という手法を配信し、成果を追うという視点ではなく広告で表現するコピーやクリエイティブが、あらかじめ仮説立てたニーズとマッチングしているか、という視点です。
ある動線は成果が向上する(CVRが改善される)ことがあり、また別の動線では成果が下がる(CVRが悪化する)などの結果データが得られますので、その知見を活かし、より獲得を増やすためには何が必要か?という次の打ち手を考えていきます。
その上で、前提として重要な点がどこの数値を評価するか、といったポイントです。このような個別最適動線は成果のための手法に過ぎません。目的設定として適切な視点とは、上記の図のように全体を俯瞰して「何を母数にとった時のCVRが、何と比較して高いのか・低いのか」を基点とし、「つまり、どう改善すれば利益が出るのか」という予測を立てます。その結果、「個別最適施策を行うことで目的が達成できるかもしれない」という仮説を設定した上で、期間を定め、実施していきます。
⑥LPのCVRは何%が適切か
Q.
ナノカラーさんの薄毛対策商品についてCVR1%から5%へと大きく改善が示されていましたが、LP内の改善でそれだけの改善が見られるのはよくあることでしょうか?
もちろん商材にもよると思いますが、広告 + LP運用での平均的なCVRはどれくらいだと実感されていますか
「全体動線平均のCVRが1%→最もPV数の多い個別動線平均のCVR5%」へ向上した事例をご紹介いたしました。最もPV数の多い個別動線の中に、クッションLPで「医師監修」軸からのダイレクトLPへの送客数(遷移数)が良好だったため、ダイレクトLPの構成をクッションLPからの流入期待に応える内容にブラッシュアップしました。
動線評価をする上で留意すべき事項として、本事例の場合、理論上は比較的CVRの低い動線を捨てると全体動線平均CVR5%となりますが、配信を止めるなどをすると非CV層も高CVR動線に流入してくるため、現実はそううまくいきません。今件もそうでした。徐々に配信ウェイトを移して行ったり、広告バナーの訴求にて除外していく手法をとることで、CVRはまた下がっていくが、全体の獲得数(CV数)を増やしていく、という施策フローに収束していきます。
上記の事例ではありませんが、母数をすべての広告動線の数で取る(全体平均)場合ですと、1つのLP内だけでの施策においていきなりCVR+3%や+5%の改善はかなり稀となります。まず個別の広告行動線上で見ていき、プロダクト・サービスの市場において競合の出稿状況やユーザーの需要などを調査した上で、現在の訴求の切り口が徐々に上げられる見込みがある軸を起点に、最高値を目指していく、といったイメージでLPOを進行をしていきます。
広告+LP運用での平均的なCVRについては、明確な値を持っていないためご回答が非常に難しいのですが、参照点として媒体ごとの平均CVRが媒体側から開示されている場合がありますので、その値を目指すことがあります。
その上で目指すべきCVRの設定方法ですが、弊社では「サービスモデルの収益構造」、「利益を試算するために必要な指標」の把握をすることを重視しており、目標CVRの決定は最後に行うことだと考えています。
例えば定期通販やサブスクSaaSですと、CV数だけでの評価では会社が本当に儲かっているのか分かりませんので、平均継続数や客単価などの指標を用いて投資対効果を定めていく、という視点が欠かせません。
その上で、会社が儲からなければ(すごく極論になりますが)事業は解散してしまいますので、広告指標は「これで稼げているのか?」という議論をするための判断材料のひとつにしかなりえない点は留意しておく必要があり、だからこそ支援をさせていただく際はKPIの設計や議論を丁寧にさせていただいています。
その結果、現在のLP流入数が保たれた上でCVR1%で利益が出ているなら「1%を下回らないようにPDCAを回していく」という目標を立てることができるようになります。ただ、事業としてCVRが10%に届かなければ利益が出ない、というケースなど、LP以外の領域においても抜本的な改善が必要かもしれません。