【株式会社ピアラ様 社内勉強会レポート】手法論(HOW)からの脱却。デジタルマーケティングの現場で求められる顧客視点とは

1.まえがき
ーマーケティングの運用自動化が進む中、なにを大切にすべきかー

デジタル領域におけるマーケティングはAI台頭による自動化が進み、人が関与する部分が少なくなっていく時代に突入しています。自動化によって効率化は進むものの、一方で「人はどんな時に感情が動くのか」という消費者のニーズに対して想像する機会は激減しているともいえます。


人の感情を数値化することはできません。しかし、データとは「人が行動した痕跡」です。その痕跡の背景には必ず人の感情が動いており、人間心理を知ることが再現性のある施策や打ち手を生み出すことに繋がると考えています。


マーケティング支援会社も制作会社も、目指すゴールは同じく「広告主の抱える問題を解決し、利益に貢献する」ことです。そのためには、
①本質的な消費者理解を深める
②施策や打ち手を生み出す思考の幅を広げる
③再現性ある仕組みに落とし込む

ことがとても重要です。



目的は同じながら、事業モデルが異なることで断絶が生まれがちなマーケティング支援会社と制作会社が、これからどのように手を取り合っていくことが事業課題の解決に貢献できるのかを共に考えるために、株式会社ピアラ様で勉強会を開催しました。

今回は、マーケティングコミットカンパニー株式会社ピアラの中山様と、株式会社nano color 代表取締役の川端との対談形式で勉強会の内容を振り返っています。ぜひご覧ください。

2.企業紹介

マーケティングコミットカンパニー  株式会社ピアラ

ビューティー&ヘルス及び食品領域において通販事業を展開する企業様のお悩みを解決する、ECマーケティングを支援。 800社以上の支援実績があり、通販DX・マーケティングDXを駆使し、全てのデータからマーケティングの最適化を行い売上にコミットする。会社HPはこちら

3.講義内容

当日は、ピアラ様のお客様で実際にお取組みされている企業のクッションLPを題材にして講義を実施しました。



【講義内容】
ナノカラー紹介
デジタルマーケティング戦略の考え方
ブランドとセールスについて
WHY(経営/ブランド)とWHO/WHAT(誰に何を)について
顧客視点からみた競合は?
この市場の顕在化されたニーズは?
まだ顕在化されていない潜在ニーズは?
そのニーズに応えるためにブランドがとるべきコミュニケーションは?
実際にクッションLPでは何を伝えるべきか?

4. 想像力が事実の裏側にある仮説に深さと広さをもたらし、テクノロジーを掛け合わせることで、施策や打ち手の効果が最大化する


今回の社内勉強会はいかがでしたでしょうか?

中山: 市場の変化によってデジタルマーケティング領域での同業他社との差異はどんどん無くなっており、優位性をつけることは難しくなっています。私たちがどんな価値を提供できるんだろうとずっと考えていたので、今回の勉強会はとてもありがたかったです。 川端: こちらこそありがとうございました。たくさんの方に聞いていただけて光栄です。 中山: 告知したらすごい勢いで参加希望者が増えたので、みんな課題に感じていたんでしょうね。今回の勉強会を通じて各々が課題に向き合うことが、ピアラの優位性(差別化)につながっていくと思っています。川端さんはその本質的な部分をわかりやすく言語化されていて、かつ現場で最前線の立場で実践されている方なので、お声がけさせてもらいました。 川端: 僕の話す内容は、これさえすれば良いというtipsではなく、刻一刻と変わってしまう答えを導き出す為の思考と工程のフローなので、「もっと明確な答えを教えて欲しい!」というお声もあるかもしれませんが、そこは各自向き合って欲しいと思っています。僕自身も答えを知らないわけですし。 中山: そのプロセスが提案の幅を広げ、ピアラ全体の底上げにつながると考えていたので、川端さんの講義はとてもありがたかったです。広告主へ施策の提案を行うにあたって、「人がモノを買うって根本的にどういうことだろうか」であったり、「選択肢が多い中で、選んでもらうにはどうしたらいいだろうか」という本質的な部分への思考を巡らせることがいかに大事かという気づきが沢山ありました。 川端: 「顧客解像度」という言葉がありますが、解像度とは何なのか。それは「解釈」の広さと深さの掛け合わせだと考えています。そして解釈には事実の収集量と収集力が必ず必要です。画面の向こうにいる消費者への想像力こそが、再現性のある施策を生むために欠かせない要素です。想像力が仮説に深さと広さをもたらし、テクノロジーと掛け合わせる事で、施策や打ち手の効果が最大化していくと考えています中山: テクノロジーの進化によってもたらされた恩恵もありつつ、一方で顧客への想像が足りなくなってしまったのが弊害の1つですよね。 川端: 獲得効率の良いクリエイティブは見つかったが、なぜ良いのかが分からないまま表層面を模倣して量産してしまう事って多いですもんね。 中山: そうなんです。これだけ多様化した顕在ニーズに応え続けるには限界があります。先ほども言いましたが「人がモノを買うって根本的にどういうことだろうか」という本質的な問いがいかに大事かと。

5.人がモノを買うって根本的にどういうことだろうかという本質的な問いの重要性

市場(時代)の変化をどの様に感じていますか?

中山: まずD2C市場においては参入するメーカーが年々増えてるという事実と、商品数の増加に伴い差別化が難しいという状況があります。一方業界においては媒体規制も強くなりコンプライアンスを守らざるを得ない状況もあり、競合と同質化して広告を出せば効果が出る時代ではなくなっています。加えて消費者の価値観も多様化して大ヒット商品も生まれにくくなっています。 川端: 中山さんはそんな状況だからこそ、本質的な人がモノを買うって?という問いを大事にされているんですね。 中山: そうなんです。その領域を川端さんはうまく言語化していらっしゃるなと思いますし、今日の勉強会の話を聞いて改めて仮説が大事だなと感じました。 川端: ありがとうございます。良い仮説って次から次へと仮説を生んでくれるんです。ただし問題に対して課題を見誤ると、どんな仮説もグダグダになって機能しない事が往々にしてあります。社内でも依頼内容やヒアリング内容という結論に対しての根拠が論理立てられているかどうかという点を重視しています。デザインをリニューアルしたいがオシャレじゃないからという根拠だとなんの筋道も通っていないですよね。 中山: これは代理店の現場でも起こりがちな事案ですね。 川端: 依頼主からの依頼内容とは、結論でもあり、同時に仮説でもあるんです。WEB広告を出せば、制作すれば、今ある問題が解決できそうだ、という仮説。私たち受託側はその背景にある問題と課題の整合性を確認し、理解し、戦略を設計しなければいけないと感じています。その中で、予算やリソース、スケジュールを考慮し、全ての戦略においてDO、DON’T、BETTERをリサーチと分析から導き出すことが重要ですね。

6.ブランドの「在りたい姿」を「在るべき姿」に変換する

講義を受けたみなさまの反応や感想はいかがでしたか?

中山: 非常に満足度も高く、講義していただいた内容を既に取り入れているメンバーもいます。全員が同じ視座と目線でインプットする事自体が難しいと思いますが、それでもやってみて失敗して、その上でまた次を考えられるメンバーが増えていく大きなきっかけになったと感じています。 川端: 講義終了後に数人の方々とお話しさせていただいて感じたのは、思考を深掘りする企業文化が徹底されているんだなと感じました。質疑応答もかなりクリティカルな質問でしたし、皆さんの頭には具体的な活用方法がイメージできていたんだと感じました。 中山: 社内アンケートでも「WHO/WHAT/HOWが統一されているかを見直したい」「クライアント含む意思決定する層への言語化に活用したい」「判断基準や初動テスト設計に取り入れる」という声が多かったです。 川端: そう言って頂けて嬉しいです。WHOが大事ってよく言われますけど、想像で作った都合のいいWHOってダイレクトマーケティングの文脈において役に立たないと考えています。その理由として、ブランドの「在りたい姿」視点から作る象徴的なブランドターゲットをWHOと定め、そのまま獲得向けクリエイティブを作ってしまうからです。本来はニーズとタッチポイントという顧客視点に合わせた「在るべき姿」に変換しなくてはいけません。 川端: 講義でも話しました「ダイエット」について。ダイエット=痩せるという一側面だけではなく、検索キーワードから顕在化していない消費者の下心(インサイト)はなんなんだろう?とリサーチすると、痩せるというキーワードには、【部位・体重・期間】という具体的な問題意識と解決願望が読み取れるキーワードが多く見受けられます。一方で太らないというキーワードには【食品】という名詞が多く見受けられ、「食べるという欲求を満たしつつ現状を維持できる手段」を求めていることが読み取れます。 【痩せる】マイナスからゼロに戻す、またはプラスに 【太らない】これ以上マイナスにならない しかし、みんなダイエット=痩せたいんでしょという思い込みでWHOとWHATを作ってしまうと、肝心のHOWでコミュニケーションのミスマッチが生まれます。 川端: 重要なのは、競合と競合を購入しているユーザーから自社商品を見た時にどこがバリュープロポジションなのかを理解すること、それをどこで誰に何を伝えるのか、それをなぜ伝えるのか、これがブランドの「在りたい姿」を「在るべき姿」に変換するために必要かと思っています。
 

7.消費者との新しい関係性を模索することが1つの答え

最後に今後のお考えを教えてください。

中山: 今回の様な勉強会が増えることで、ユーザー(施策の対象者)と目的の解像度が上がり、一層お互いの専門性を発揮しやすい環境になるのではないでしょうか。それは、ビジネスモデルや商流も違う広告主・マーケティング支援会社・制作会社、三者間のコミュニケーションの不一致を解決する方法だとも言えますので、今後も一緒にお取り組みできると嬉しいです。そのためにも、今一度消費者との新しい関係性を模索する事が1つの答えになると信じています。 川端: まずこの様な機会をいただけること自体が光栄です。今回の勉強会で僕が話したかった事は、決してHOW(手法論)が上か下かという話ではなく、思考の順番として前か後ろかの話です。仮説や目的のない打ち手で得られた結果からは、表層面でしか評価ができませんし、その後の打ち手は表層面をなぞり続ける打ち手しか生まれず、いずれ枯渇してしまいます。このサイクルからいかに脱却すべきかという1つの視点として皆さんと共有できたら、業界全体を通じてより良い環境が生まれる気がしています。

8.おわりに(編集後記)

    

制作会社がマーケティング支援会社でなにを講義するの?と思われたかもしれません。
マーケティング支援会社も制作会社も「クライアントの事業課題の解決に貢献する」という目的は同じです。再現性のある施策を生み出していくためにも、今一度本質的な部分に思考を巡らせ、いかに消費者の「心を動かす」ことができるのかを考えてみる場として、今回の勉強会の開催に至りました。
当日はオンラインでの参加も含めると60名超の方にご参加いただき、非常に有意義な時間となりました。今後もマーケティング支援会社と制作会社の従来の関係に捉われず、新たな取り組みを模索していきたいと考えています。
今回は貴重な機会をご提供くださったピアラ様、中山様ありがとうござました!