「数値ばかり見るのは危険」LP制作における定性リサーチの重要性とは?


LPやクリエイティブの制作において重要な事前リサーチ。

私たちナノカラーも、制作時には「定量リサーチ」と「定性リサーチ」を実施しています。

今回は、リサーチャーの菅原大介さま(@diisuket)と弊社代表の川端が、リサーチの重要性とその方法について対談いたしました。

対談者の紹介

リサーチャー
菅原 大介(すがわら だいすけ)

リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で株式会社学研ホールディングスを経て、株式会社マクロミルで月次500問以上の調査を運用するリサーチ業務に従事。現在は国内通信最大手のグループ企業でマーケティング戦略・中期経営計画の立案を担当する。

株式会社nanocolor
川端 康介(かわばた こうすけ)

株式会社nanocolor 代表取締役。起業10年で約1,000本LP制作と解析と運用を実施。デザインや経営は独学。データ解析 × ユーザー心理 × クリエイティブで真っ当な広告デザイン創出を目指す。

「売上の機会損失を導く」リサーチャーの考える定性リサーチをしないデメリットとは

川端

ナノカラーは、LPやクリエイティブの制作で「定量リサーチ」だけでなく「定性リサーチ」をかなり重視しています。

※本記事では、以下のように定義させていただきます。
定量リサーチ:Google Analyticsやヒートマップ、統計データなどの数値調査
定性リサーチ:SNSや口コミサイトのレビュー調査やアンケート調査。

川端

あくまで私の体感ですが、一般的にLPやクリエイティブ制作においては、定量リサーチが重視されやすいなと。

ですが同じくらい、いや、もしかするとそれ以上に定性リサーチは大切なのではないかと思うんです。

菅原さんは、LP制作における「定性リサーチ」をどう思いますか?

定量リサーチだけではLPやクリエイティブの案が出ない

菅原

私も定性リサーチは重要だと思います。
定量リサーチだけでは具体的なペルソナ像が浮かばず、LPやクリエイティブの案が出ないためです。

川端

LPやクリエイティブの案が出ない……例えばどのようなイメージでしょうか?

菅原

ユーザーに刺さる言葉が浮かばない」などです。

例えばフルーツを売る場合に刺さる=購入されやすい言葉はフルーツごとに違います。梨なら「みずみずしい」さくらんぼなら「宝石箱のような」などですね。

こういった言葉は数値を分析する定量リサーチでは見つかりません。

川端

「ユーザーの生の情報」がわかりLPに反映できるのは、定性リサーチの強みですよね。

定性リサーチをしないと「発生するはずの売上」を逃しやすい

川端

他に、定性リサーチの「重要性」や「実施しないデメリット」のようなものはありますでしょうか?

菅原

定性リサーチを実施しないと「発生するはずの売上」を逃すことがあります。 例えば、売上やCVRなどの分析(定量リサーチ)を重視していたとあるECサイトがありました。 そこでは「売れている商品=ユーザーの求める商品」だから、LPやクリエイティブに載せようと考えていました。 これでもある程度売上は伸びるのですが、実はこの考えには落とし穴があります。

川端

落とし穴、ですか?

菅原

売り上げ下位でも、利益率がすごく高い商品を見逃す」という落とし穴です。 例えば、一般的にECでは「梅」の売上はジャンルとして中下位であるため、バナーやLPに載せる候補にはあがりません。 しかしユーザーの口コミを調査(定性リサーチ)していると、5~7月にかけて「梅仕事(自宅で梅酒や梅シロップを作る作業)」をしている人が見つかりました。 そこでこの時期にだけ「梅」のバナーやLPを作ってみたところ、予想通り一部の層から反響があり、明らかに低い広告費での訴求につながったんです。低い広告費で売れることは、利益増加に直結します。しかもリスクも低い。

川端

たしかに、売上やCVRだけ見ていたら、「梅を訴求したら売れやすい」なんて気づけませんね……!

菅原

はい。定量だけを見ていると、売れやすい人にアプローチする機会を逃してしまう可能性があるんですよね……!

ここまでのまとめ

リサーチャー菅原の考える定性リサーチをしないデメリットは以下の2つ。

  • LPやクリエイティブで、効果的なコピーやデザインが浮かびにくい → CTRやCVRの低下
  • ユーザーの思わぬ需要に気づけない → 「発生するはずの売上」を逃しやすい

定性リサーチが甘いと「存在しない人」をペルソナにしてしまうリスクがある

菅原

では逆に、川端さんの考える「定性リサーチを実施しないデメリット」についても聞かせていただけますか?

川端

まず一つ、「妄想で存在しない人をペルソナにしてしまい、CVRの低いLPを作ってしまう」というデメリットがあります。

菅原

詳しくお聞きしてもいいですか?

川端

ある調査で「今の年齢より若く見られたい女性は、全体の約60%」という定量データがありました。それ以外の女性は「年相応に見られたい」と回答しています。

つまり基本的に「女性は実年齢以下で見られたい」ことがわかったんです。

ただ一方で、「エイジングケアの化粧品を使っている人は少ない」というデータもありました。

菅原

年齢以下で見られたい女性が多い。

それなのに、エイジングケア化粧品を使っている人は少なかったのですね。

川端

はい。実際、あるエイジングケア化粧品で「若返る肌に」のようなアンチエイジング系のLPを作った結果、CVRも低かったんです。
そこで、ターゲットである40代の女性にインタビューすることにしました。

実際その女性も「お肌の劣化が気になる」とは言っています。ですが先ほどのLPを見せると「なんか違う。自分のことじゃない」と。

菅原

たしかに、お肌の劣化を気にしている。でも「劣化とは言われたくない」ということでしょうか?

川端

はい。さらに質問していくと、その女性は「たしかに劣化は気になる。けど『若返り』や『アンチエイジング』と言われると、まだ自分には早く感じる」とのことでした。

「今の年齢以下で見られたい人は若返りたいだろう」と、妄想のペルソナに向けたLPを作ってしまっていたんです。

川端

もちろん一人に深く聞いただけなので、その女性の意見がすべての女性の声ではありません。
ただ、実際に「『変わらないね』と周りから言われる肌へ」と変えたところ、CVRがかなり改善しました。

菅原

インタビューという定性リサーチのおかげで「実在するペルソナ」を明確に設定できた。その結果CVR向上につながった、というわけですね。

川端

はい。あとは定性リサーチに取り組むことで「悩みの深さ」も分類できます

「肌のシミが気になる」と言う人全員が、必ずしも今すぐ治したいわけではありません。

菅原

「治したいが、ゆっくりで構わない」「そもそも解決する気があまりない」など、悩みの深さは人それぞれということですか?

川端

はい。なのでレビューや口コミで「その商品を買っているのはどの悩みの深さの人なのか?」を明確にしないと、興味を持たれないコピーを書いてしまうかもしれません。

例えば「1ヶ月後の夏休みまでにシミを消したい」考えている人に対して「長期的にシミができにくくなる」と書いても響かないですよね。

悩みの深さを分類することで、期待値のズレも防げる

菅原

悩みの深さを分類することで、期待値のズレも防げそうですね。

悩みが明確であれば「ここまでならケアできます。こういう人に向いています。」と訴求できます。

その結果「思ったよりも効果がない」とレビューが荒れたり、リピート率が下がったりすることも少なくなりそうだな、と。

川端

おっしゃる通りです。実際、期待値のズレを調整したところ、荒れていたレビューが改善した事例もあります。
効果が少なかった人でも、悪いレビューを書くのではなく「”私には”合わなかった」と書いてくれるだけになったんです。

菅原

詳しくお聞きしてもいいですか?

川端

オールインワンジェルを例に考えてみます。
そもそもオールインワンジェルの強みは基本的に「化粧水、乳液、クリーム、美容液の機能がすべて含まれていること」です。
そのため期待値のズレを防ぐのであれば、潤いの補給など「足りないものを補う」という内容で売るべきと言えます。
しかし近年では、競合商品と差別化するために、保湿やシワ、美白など「気になる悩みに効く」と売られることもあるんです。

オールインワンジェルの機能と効果

菅原

「悩みに効く」と書くと興味を持ってくれる人は増えますが、オールインワンジェルの持つ機能以上に期待値も上がってしまいそうですね。

川端

そうなんです。そのため「期待したよりも効果が出なかった」とレビューが荒れやすく、リピートせずに解約する人も多い傾向にあります。

期待値がズレるとレビューが荒れやすい

ここまでのまとめ

ナノカラー川端の考える定性リサーチをしないデメリットは以下の2つ。

  • 存在しないペルソナを作成してしまう → CVRの低下
  • 期待値のズレが生まれる →リピート率の低下、口コミの悪化

具体的な定性リサーチの方法と本音を引き出すコツ

菅原

では実際ナノカラーさんは、普段のLP制作ではどのような定性リサーチをおこなっているのでしょうか?

川端

基本的にはデスクリサーチです。具体的には、以下の2パターンですね。

・アンケート調査(広告主の調査結果やWeb上のデータなど)

・レビュー調査(アットコスメ/楽天など)

また、必要に応じてインタビューも実施しています。

菅原

私がLP制作でリサーチする際とまったく同じです(笑)

もしよければ、何か調査結果を見せてもらえますでしょうか?

川端

例えばレビュー調査なら以下のようなレポートです。

nanocolor 調査サンプルレポートイメージ資料より抜粋

川端

レビューやアンケートを集めた後は、コピー・デザインの方向性を決めるために「2軸ペルソナ」に落とし込みます。

菅原

2軸ペルソナ、ですか?

川端

商品・サービスの購入に最も影響を与えそうな2つの項目を、縦軸横軸に当てはめたペルソナ」のことです。

オールインワンジェルなら「情報摂取量・ブランド認知・肌トラブル有無・価格帯」など、競合商品と差別化できる項目を2つ選定します。

2軸ペルソナのイメージ

菅原

2軸ペルソナに落とし込むことで「最も購入しやすい人物像」がイメージできるわけですね。その結果、コピー・デザインの方向性が固まると。

では縦軸横軸はどのような流れで選ぶのですか?

川端

リサーチして集めた「競合商品」や「市場の状況」「ユーザーの声」をもとに「ああでもない、こうでもない」と選んでいます。

川端

ただ、集めた情報を2軸ペルソナにうまく落とし込めないケースがあるんですよね。

例えば「レビューやアンケートを集めてもユーザーの本音が見えてこない」などです。

思うような投稿が得られなかったり、「アンケートだから気を使って良い回答をしているのではないか?」と疑ってしまったり……。

菅原

ユーザーの本音が見えないときは「憧れの人は誰ですか?」と聞いてみるのがおすすめです。

この質問をすると、ユーザーの細かいニーズが本音レベルでわかります。

川端

詳しくお聞きしてもいいですか?

菅原

例えば、あるフィットネスクラブで会員に入会理由をアンケート調査しました。すると、1位は「ダイエットのため」だったんです。

なのでそのクラブのLPも「メタボ解消」「夏までに痩せよう」などのダイエット訴求がメインでした。

川端

それだけ聞くと、自然な流れに感じます……!

菅原

しかし思ったよりもコンバージョンが出ません。そこで、アンケート調査で「憧れの人は誰ですか?」の質問を追加してみたんです。

すると、多くの会員が「ローラ」「AYA」と答えました。

川端

「筋肉質」な印象の強いお2人ですね。

菅原

そうなんです。蓋を開けてみると、クラブ利用者の本当の入会理由は「ダイエット」ではなく「ボディメイク」でした。

つまりLPも「痩せよう(=ダイエット訴求)」より「引き締まった理想の身体に(=ボディメイク訴求)」のほうが効果的だったんです。

実際そのクラブでは、LPを変えてCVRが向上した報告を受けています。

菅原

他にも定性リサーチのコツとして

「業態の利用サイクル」を聞く

「利用しているメニュー」を聞く

などがあります。

詳しく解説した記事があるので、もしよければ覗いてみてください。

川端

ありがとうございます。

ここまでのまとめ

  • ナノカラーのLP制作でのリサーチは主に「デスクリサーチ(アンケート調査、レビュー調査)」+「必要に応じてインタビュー
  • 集めた定性データは2軸ペルソナに落とし込み、コピー・デザインの方向性を固める
  • 定性リサーチのコツは「その分野における憧れの人」を聞くこと

まとめ

本対談のまとめ

  • LP制作におけるペルソナ設定のためには定性リサーチが欠かせない
  • 定性リサーチをしないと「ユーザーの思わぬ需要に気づけない」「存在しないペルソナを作成してしまう」「期待値のズレが生まれる」などのデメリットがある

私たちナノカラーのLP・クリエイティブ制作では、ペルソナ設計に長い時間をかけています。

もちろん数値データが取れるのはWebの強みです。集めた定量データは私たちも活用します。

しかし細かい数値まで取れるWebだからこそ、画面の前にいる人の気持ちに盲目だったり「ユーザーはこう考えるはず」と決めつけてしまったりしやすいもの。

なので私たちナノカラーは、「妄想のペルソナ」ではなく「実在するひとりの人」にLPを届けるべく、これからも定性リサーチを続けていけたらと思います。

もし「LP制作や運用に課題を感じている」という場合は、私たちナノカラーにご相談ください。

  • 初めてLP制作を依頼するけど不安
  • 既に広告出稿しているが、イマイチ成果が出ない
  • ある程度成果は出ているが、今後の施策が手詰まりになった

⇒どれも私たちが得意な領域です。LP制作や前後のコンサルティング、広告運用との紐づけまでワンストップでお受けいたします。

まずはお気軽に、以下のフォームからご相談ください。

菅原さん、ありがとうございました!