0. はじめに
「なんかよさそう」と「これがいい」には大きな隔たりがある
物が溢れる時代と呼ばれてかなりの時間が過ぎました。消費者とダイレクトにコミュニケーションをとるLPにおいても顕著にそのことを実感します。品質の高さや優位性は必要です。しかし品質だけの優位性はもはや選ばれる理由にはなりづらく、品質が消費者の満たされていないニーズに対して解決できる事が重要であり、それを正しくターゲットに対して伝えるコミュニケーションが必要です。 これが「なんかよさそう」と「これがいい」を分ける差です。
販売者目線で語られる消費者目線
消費者目線にたつという言葉がありますが、現実的に消費者の目線にたつことは容易ではありません。多くの場合は売り手の都合の良い顧客像やで主観によるものです。ではどの様にして消費者の視点を得れば良いのでしょうか。ナノカラーでは、様々な視点から選出した競合を収集し分析します。これにより得られるのは競合の「売り方」です。 次に競合のユーザーを収集し分析します。これで得られるのは「買われ方」です。この2点により擬似的な市場ニーズを把握します。そして重要なのは市場のニーズに対して商品事実が応えることができるかどうかです。弊社はこの商品事実と市場のニーズが重なる領域を、企業課題に応じてコントロールするコミュニケーションを、広告導線を通じてデザインやコピーで表現することを目指しています。
市場を理解する為に顧客を知ることが本質的である
マーケティングリサーチにはインターネット調査やデプスインタビューなどの定量/定性調査がございます。もちろん必要なのですが、より生々しい声を知る為には、競合商品を購入した方の声です。どんな人が何を求めてどう感じて、どんな行動をとったのか?このデータ蓄積により、市場で求められている領域に輪郭が見い出せ、その結果によってまだ満たされていない領域が仮説として浮かび上がってきます。これが未充足ニーズです。
ナノカラーでは、この未充足なニーズ発見のためにリサーチを実施し、広告クリエイティブが正しく機能させることで成果を最大化できると信じています。
限られた事業資源を無駄にしない為にも、顧客のご要望の実現性の判断と、我々が実施すべきと考える提案の重なる領域が最大化できる現実的な領域を正しく理解し合い、双方にとって最善と考える領域への予算投下を実施していただく事が目的となります。
5つのステップで行う制作前リサーチ
弊社のリサーチは5つのステップで実行されます。その目的は現状把握・傾向理解・差分把握の3点を事実をもとに把握し、今必要な最適解となるクリエイティブ制作を目的としています。


1. STEP.1 企業理解
1-1 企業理解
事業戦略 / 事業規模 / 全体像の把握 / ビジネスモデル / 取扱ブランドやプロダクトの把握
1-2 与件整理
事業環境 / 直近課題 / 施策候補 / 弊社への期待領域 / 施策優先順位 / 予算 / スケジュール / 販売チャネルの把握 / 想定ターゲット / 保有データ把握 /過去実施施策データ/販売実績(既存商品)
企業理解 / 与件整理
類似商品や類似サービスであっても、各企業によって開発背景、事業フェーズ、そしてブランド戦略や事業戦略、保有資源が全く異なります。そのために私たちの制作物が正しく機能するために、お客様から「選ばれる理由」や、商品の価値を届ける仕組み(価格や流通、広告など)が、どの様な理由、背景によって生まれたのかを理解する必要があります。 その理解によって、私たちは顧客要望を正しく疑い、お客様の保有資源を無駄にしないための施策優先順位と有効性を判断し提案します。 一方で、私たちが制作会社としての役割を果たすために、エンドユーザーである消費者に対して、CVを含む目的とした行動喚起をさせる必要があります。そのため、私たちはターゲットの行動や心理と向き合う調査が多く含まれております。ユーザーの共感領域を正しく理解し、ターゲットの問題や心理を正しく定義することで、提供できる便益性を正しく伝えるコミュニケーション方法が見出せます。 LPなどの広告クリエイティブは、早いサイクルで運用することが多くございます。このサイクルにはテストによって得られたデータを次々と活かし続けることができる利点があります。じっくり考える・早く回す、どちらの視点も欠けてはいけません。しかし冒頭にも記載した通り、各企業によって保有資源が異なりますので、「じっくり考える」「早く回す」という2つのバランスを適所に使い分け、未来に必要な施策を描きつつ、今まさに必要な施策を生み、成功に導かなければいけません。 そう考えると、この2つの視点の先には必ずターゲットが存在しています。ターゲットの理解によって、マーケティングにとってもデザインにとっても、転用ができ、且つ具体的な施策に落とし込む事ができるようになります。
2. STEP.2 ブランド/プロダクトの理解

2-1 ブランド理解
ブランド理念・価値提供領域の把握 / ブランド利用者の把握 / ブランド戦略(施策把握) / ブランド開発背景
2-2 プロダクト理解
プロダクト開発背景 / プロダクトの解決領域の把握 /プロダクト利用者の理解(口コミなどデスクリサーチ)
プロダクト理解にはブランド理解が欠かせません。どんな方法を使っても売れればいいという訳ではありません。時にダイレクトマーケティングではブランドを損なう表現も見受けられます。本来はブランド価値を理解していただきやすいターゲットと、その方との関係性を築く情報、そしてコミュニケーションが、消費者との接点であるクリエイティブには必要と考えており、それはLPにおいても同様です。 そのため、ブランドの定めるトーン&マナーをなぞるだけではなく、ブランドを消費者に理解できるように翻訳する必要があります。ナノカラーでは、プロダクトとブランドを同時に理解する必要があると考えています。
3. STEP.3 行動事実と行動理由の理解

3-1 行動の事実
媒体別広告データ分析 / LPヒートマップ分析(期間別比較 / CV・非CVユーザー別比較 / 初回・再訪問比較 / 流入経路別比較 / 分析によるCV要因/離脱要因の仮説設計) / 現行広告導線の機能有用性とボトルネックの抽出
3-2 行動の理由
保有課題の深度 / 課題の保有期間 / 保有課題の緊急性 / リテラシー / 使用体感 / 評価 / スイッチ商品やブランド / コアユーザー理解(アンケート/インタビュー)
過去の広告データから数値の推移や実施施策の成果や変化、さらにLP内のヒートマップから現行LPに存在している購買要因や離脱要因など残すべき領域と排除または改善が必要な領域を棲み分け、制作するLPに組み込むべき要素として活用します。ボトルネックが明確に多く見受けられる際は、LP改修を含めたテストを実施し、改善の確証を得た上での制作をご提案します。 広告データで得た数値は消費者が行動した事実です。ただしその数値は単なる数値であり、背景には必ず行動の理由が存在しています。その背景の一端である情報を得るために、ヒートマップのデータとも照らし合わせます。 ヒートマップや広告データなどを見る際に重要なのは、細かくセグメントを分けることです。CVRをはじめ、アテンションヒートマップや離脱率などはあくまで一定の期間で切り取った平均値であり相対値のひとつに過ぎません。行動理由までに落とし込む際は、細かなセグメントや比較対象によって見出します。


上記は一例ですが、LP内のCTA箇所の残存率とクリック数/アテンションをGoogle検索広告とYDNで区分けした際に差分が発見する事ができました。この差分を観察すると、流入経路によって生じた訪問者の情報摂取への積極性や、CVに必要な求めていた情報、離脱した要因が仮説として見出す事が可能になります。
4. STEP.4 市場動向の理解
4-1 市場リサーチ
キーワード量・検索推移の調査 / SNS投稿調査 / 検索数推移/トレンド / ハッシュタグ / サジェスト / クリック単価 / キーワードから想起される印象 / キーワードから求められている領域 / 時代潮流や背景/文化/などの理解

市場規模の推移
顧客商品とのタッチポイントとなる市場やカテゴリーでの動向やアンケート調査結果、キーワードの検索ボリュームや検索推移、さらにSNSでの投稿数やハッシュタグ数を調査し、事実数を増やす事による主観での判断を排除します。
市場ニーズ
検索キーワードやハッシュタグの傾向やトレンド推移、クリック単価など様々な要素から、キーワードの需要やニーズ、検索者の背景にある心理などを読み取り、以降に実施するキーワード定義に活用します。
キーワード定義
同じ表現や言葉からも人により想起される印象やインサイトは異なります。この差分を明確にするために、キーワードを細分化し定義する事で狙いやすいターゲット心理や状況が可視化され、制作するクリエイティブにどの様な要素が必要なのかが明確になります。これは、言葉が持つ定義をターゲットごとに分類し、使用すべき表現の差分を明確にする事で意図的に差分を使い分け、施策の打ち手枯渇を防止することも可能になります。
5. STEP.5 競合分析

5-1 競合商品抽出
同カテゴリー競合商品 / 同販売チャネル競合 / 同スペック競合 / 同価格帯競合 / 同訴求競合 / 表現・販売方法・特性の近似値競合 / 代替競合
5-2 競合スペック分析
カテゴリー / 価格 / 送料 / 容量 / スペック / 特徴
5-3 競合ユーザーレビュー収集
保有課題の種類/使用キーワード / 保有課題の深度 / 保有期間 /競合商品購入に対する期待値 / 競合商品使用に対しての体感 / 競合商品使用に対しての評価 /レビューに記載されたスイッチ商品
競合とは、売り手自身がベンチマークしている企業やプロダクトを競合と選定するのみを指すのではなく、消費者が必要と感じた際に想起する競合、その際に消費者と接点をとる売場や媒体面の競合、価格競合や訴求競合など消費者の視点の数だけ「競合である」と扱います。これらすべてを含めた定義での競合のスペックや広告クリエイティブ要素などから売り方の特性を捉えます。同時に競合を購入し使用した消費者の声も合わせて収集します。
消費者のクチコミには、インタビューだけでは収集しきれない本音が溢れています。商品に何を求めていたのか?何にがっかりしたのか?などから、どの様な状況や悩みがあり購入したのか?という情報が収集することが可能になります。これが限りなくインサイトに近い状態です。
インサイトとは言葉にできていない本音です。その言葉の定義の通り、どんなにインタビューやレビュー収集をしても見つかりません。しかし、競合の「売り方」と「買われ方」の両側面を収集することで、各競合のユーザー特性が見出され、その集合体が市場の顕在化されたニーズであると浮かび上がってきます。その中に存在する満たされていない欲求が、未充足ニーズとなります。
競合ピックアップ
先ほど述べた通り、商品者の視点やターゲット、販売チャネルや事業戦略によって競合の定義は大きく異なり、数は膨大にあることが分かります。多くの競合選定の中から、もっとも顧客状況と近しい競合、目標に近しい競合、最も比較される可能性がある競合、逆に比較されない競合、など見習うべきものと排除するものを定義するための軸を作り、施策内容にブレが生じないようにする事が目的です。特に理由のない競合選定をしてしまうことで無駄な優位性を見立ててしまうケースがあります。実際の消費者が望むニーズに応えられないコミュニケーションを回避するためにも、競合ピックアップは慎重に行う必要があります。
競合ユーザー調査
クチコミやレビューが収集しやすい商材に関しては、ECモールやクチコミサイトから収集し解析します。レビューには購入者の保有課題の深刻さや期待値、またスイッチした商品など多く収集することで、商品ごとの購入者特性の解像度が向上します。さらに、頻繁に使用されるキーワードやその定義(どの様な意味でそのワードを使用しているのか)を理解する事で、ターゲットを細分化する要素として活用します。アンケートやインタビューとは違い、自己完結している感想には他者を意識していない本音が多く存在しており、インサイトの抽出にとって極めて信憑性が高いデータとなります。
競合ポジション
レビュー収集と合わせて、競合の広告コピーや広告クリエイティブの傾向、訴求軸や使用ワード、構成(情緒コンテンツ/合理コンテンツの比率割合)などを調査し、比較された際の差別化と商品価値としての優位性が表現可能な領域を策定し、競合を含むカテゴリー内でのポジションマップを作成します。ポジションマップには横軸/縦軸の区切り方によって位置が大きく異なるので、レビューなどから購買要因をいくつか抽出し、その軸を使用します。
6. リサーチによって導き出されるもの
消費者目線でのキーワードの定義


消費者が使用するキーワード例として「エイジングケア」と「アンチエイジング」がございます。どちらも年齢に対しての予防やケアの表現ですが、対象商品の購入者レビュー特性から、それぞれどの様な目的で使用されている言葉なのかを定義することができ、その2つのキーワードを取り巻く消費者ニーズを5つに分類することができます。
緊急性やリテラシーで区分けした2軸ペルソナ

収集した情報から、ペルソナを2軸(4象限)に分類します。ペルソナの明確な差分を抽出するために必要な作業項目であり、年齢や家族構成という一般的なデモグラではなく、今必要とする可能性(CV確度)を測定するための分類をすることで、以降に制作するコピーや表現、訴求軸を策定するために必要な要素を明確にすることが目的です。
ターゲットの心理状況を概念化

全9パターンの心理状況を概念として可視化したフレームワークに落とし込むことが可能となります。1つのプロダクトには様々な側面があります。人によっては趣向品となり課題解決品にもなります。そのため、ターゲットの心理状況によって求めている未来像も、感じるプロダクト価値も異なりますので、この様な概念図によって「狙うべき顧客」と「狙うべきではない顧客」を区分し、訴求の軸を定めることに活用します。
7. 【まとめ】 リサーチは「制作物を正しく機能させるため」に必要
制作物を正しく機能させるには、現状・相手・差分を明確にする必要があります。現状はただしく把握する必要があり、比較対象によって良くも悪くも評価できます。相手は売り手目線や主観だけの妄想の相手ではなく実在する人物の中から見出す必要があります。現状と相手が見出せると、そこには必ず差分が存在していることがわかります。その差分を埋めることが目的達成には必要であり、そのクリエイティブこそが私たちの制作するクリエイティブを正しく機能させるということです。 仮に女性画像と商品画像の2パターンのファーストビューのA/Bテストを実施して、女性画像版が勝ったとします。この勝ち要因は?それぞれの購入者特性はどんな違いがあったのか?この様に結果だけで判断された手法は、再現性がなく、自ずと競合他社との差分も無くなっていき、消費者にとってはどんどんと「選ぶ理由」が見出せなくなってしまいます。これが近年の獲得効率の悪化の原因のひとつでもあると考えられます。 事実をベースにした仮説設計に基づくリサーチフローを徹底することで、私たちは主観を排除し、本来知る術がないはずの人の心理を定量的な結果で計測し解析することができ、結果的にロジカルな広告クリエイティブの制作が可能になります。それは、マーケティング戦略の中に組み込まれたLPという役割を果たすべき制作物を作成するために必要な視点です。調査項目や調査領域は一部異なりますが、LPではなく別の制作物や役割を持つ概念(ブランディングに必要なコンテンツ作成/ロゴ/コーポレートサイト等)であっても、基本的な流れはすべて等しく、重なり合っていると考えています。役割に応じて制作物や形成すべき概念を変えるだけであり、すべての起点は顧客心理の理解にあり、商品価値を市場に合わせて再構築することが実現可能となります。 ナノカラーでは、依頼側の「自社課題」や「リサーチの目的」を丁寧にヒアリングし、事業フェーズや商材に合わせたリサーチ項目の設定・クリエイティブのプランニングを提供しています。 「顧客理解やユーザー理解をしたいが、何からすべきかわからない」といったケースなどの豊富な相談実績がありますので、お気軽にご相談いただければ幸いです。

株式会社nano color 代表取締役。デザイナー。ナノカラーは「WEB通販」を営む小売事業からスタートしており、「サービス提供側」が制作提案の原動力となっています。商品の企画設計時からプロジェクトに参画し、「長期的ブランディング支援〜短期的獲得型運用」までを一気通貫でご提案しております。