LTV向上に有効な戦略6つ!算出方法や必要な理由も解説
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)は、企業が健康的な経営を行うために重要なマーケティング指標です。
新規顧客の獲得が難しくなる中で、既存顧客との関係性維持に着目する企業が増えたことから、LTVは注目を集めています。
そのため、LTV向上の重要性を感じることもあるのではないでしょうか。
しかし「LTVを向上させたい」と思った場合に、このようなお悩みを抱えている方は多くいらっしゃいます。
- LTVを向上させるためにどのような施策を行えばいいかわからない
- 自社のビジネスモデルに合ったLTVの算出ができていない
- なぜ自社のLTVがその数値になっているかがわからない
本記事では、ビジネスモデルごとのLTV算出方法やLTV向上に有効な6つの戦略を、丁寧に解説していきます。
目次
LTVとは
LTV(Life Time Value)は、顧客生涯価値といわれるマーケティング指標です。
顧客1人(BtoBの場合には1社)が企業と取引を開始してから終了するまでの期間に、どれだけの利益をもたらすのかを表す数値です。
ロイヤリティが高い顧客ほどLTVも高くなるため、既存顧客との関係性を計る指標としても使われます。
顧客ニーズの多様化や環境の変化が大きくなり、新規顧客の獲得難易度が上がる中で、LTVは注目を集めています。
ビジネスモデル別算出方法
LTVの算出はビジネスモデルによって異なります。
BtoC・D2Cのリピート商材 |
平均購入単価×平均購入回数×平均継続期間 |
---|---|
BtoB商材 |
年間取引額×収益率×継続年数 ※顧客一人当たりの |
サブスク商材 |
平均購入単価×収益率×平均継続期間 |
自社のビジネスモデルに合わない数値を使っていては、現状を正しく理解できません。
自社に合った計算式を知り、LTVを正しく把握しましょう。
それぞれのビジネスモデルについて解説します。
BtoC・D2Cのリピート商材の場合
ECや小売、サービス業といったBtoC・D2Cのリピート商材の場合、LTVは下記の計算式で求められます。
LTV
=平均購入単価×平均購入回数×平均継続期間
BtoB・CtoCのリピート商材の場合、事前にそれぞれの平均値を出しておくことがポイントです。
また、全体の平均値を決めて計測したい期間ごとに算出することで、成果の良し悪しを判断することもできます。
LTV向上のためには、掛け合わせる購入単価、購入回数、継続期間それぞれを上げる方法を考える必要があります。
BtoB商材の場合
BtoB商材の場合、LTVは下記の計算式で求められます。
LTV
=年間取引額×収益率×継続年数 ※顧客一人当たりの
BtoB商材の場合、LTVの算出に収益率を使用します。取引ごとに収益率が異なることが多いからです。
たとえば下記の2通りの企業があった場合、LTVが大きくなるのは取引額が小さくとも収益率・継続年数が良い企業です。
- 取引額は大きいが、収益率が低く継続年数も短い企業
- 取引額は小さいが、収益率が高く継続年数も長い企業
BtoB商材の場合には、収益率や継続年数を高めることを考える必要があります。
サブスク商材の場合
会員になっていただき継続的に購入してもらう、いわゆるサブスクリプション商材の場合、LTVは下記の計算式で求められます。
LTV
=平均購入単価×収益率×平均継続期間
サブスク商材の場合、一定の利益が見込める反面、解約リスクがあることが特徴です。
利益率を上げるためには継続期間がポイントとなるため、LTVの算出にも平均継続期間を用います。
もし平均継続期間がわからない場合には、解約率を用いて算出することも可能です。
LTV
=平均購入単価×収益率÷解約率
サブスク商材の場合、解約リスクを抑え継続期間を伸ばすことがLTV向上のために重要です。
LTVアップが必要な理由3つ
具体的になぜLTV向上が必要なのかを紹介します。
- 新規獲得はコストがかかり続ける
- 売上に貢献する顧客が事業の鍵
- LTVの高い顧客による副次的な効果が期待できる
LTVを向上させることは、売上・利益の向上につながります。積極的にLTV向上施策に取り組むことがおすすめです。
1.新規獲得はコストがかかり続ける
マーケティングにおいて「1:5の法則」といわれるように、新規獲得コストは既存顧客を維持する5倍かかるといわれています。
市場の成長期は低コストで新規顧客を獲得できても、成熟期の新規獲得は難易度・コストともに上がります。
またニーズの多様化や環境が変化する中では、新規顧客の獲得難易度は日々上がっているといえるでしょう。
そのため、新規獲得ばかりに目を向けているとコストは増大します。
対して既存顧客はすでに自社に興味を持っている状態のため、継続してもらいやすいです。つまり新規顧客よりも低コストで売上につながります。
継続利用でLTVの高い状態になれば、自社の商品・サービスに満足しているといえるため、競合他社への乗り換えリスクも減少します。
企業の利益を安定させていくためにも、既存顧客に目を向け、LTV向上に努める必要があります。
2.売上に貢献する顧客が事業の鍵
イタリアの経済学者が提唱する「パレートの法則」は「8:2の法則」とも言われ、全体を構成する要素の2割が、全体の数値の8割を生み出すと考えられます。
この法則をマーケティングで考えると、売上の8割は2割の既存顧客が作っているといえます。
そのため既存顧客と中長期的に良好な関係を築いていくことは重要です。
特に重要な既存顧客へのアプローチを手厚く行い、継続的な取引を実現させていくことは売上にも直結します。
売上に貢献してくれる既存顧客との関係性を維持するためにも、LTV向上に努める必要があります。
3.LTVの高い顧客による副次的な効果が期待できる
継続的に購入をしてくれる顧客、つまりLTVの高い顧客は顧客満足度(ロイヤリティ)が高い状態です。
その中でも、商品サービスへの愛着をもってくれている顧客は、SNSでの投稿や口コミの拡散など他社に推奨してくれる傾向にあります。
BtoB企業の場合は導入事例への協力を打診することで、マーケティングや営業活動に展開することも期待できます。
顧客自身がSNSや口コミなどで波及することで、新規顧客獲得にもつながります。
LTVを向上させることで売上以外の効果も期待できます。
LTVアップ戦略6選
LTVを向上させるために有効な戦略を6つ紹介します。
LTV向上施策には
- 顧客のアプローチを通じて直接的に向上させる方法
- コストを下げることで間接的に向上させる方法
の2種類があります。
直接的なLTV向上施策 |
|
---|---|
間接的なLTV向上施策 |
|
自社のビジネスモデルに合わせたLTV向上戦略に取り組んでいきましょう。
直接的にLTVをアップさせる
まずは直接的にLTVを向上させる施策を紹介します。
直接的に向上させるためには、顧客との良好な関係を育むことがポイントです。
ひとつずつ見ていきましょう。
1.平均購入単価を上げる
算出要素の一つである平均購入単価・取引額を上げることは、LTVの向上に欠かせません。
平均購入単価を上げる方法は下記です。
- クロスセル
- アップセル
- 値上げ
クロスセルは、関連商品を合わせて購入してもらう取り組みです。ECサイトで一般的な手法で、いかにメインとなる商材に関連・付帯する商品をレコメンドするかがポイントになります。
アップセルは、よりグレードの高い商品・サービスを提案することです。買い替え時期や契約更新時期に合わせて行うと成功しやすい取り組みです。
クロスセル・アップセルを提案する際に重要なことは、顧客に対して対価に見合う価値や魅力を十分に説明することです。
もし顧客に納得感のある提示ができない場合、顧客離れにつながるリスクがあります。
成功させるためにも提案のタイミングは見誤らず、顧客のエンゲージメントが高いタイミングで行うようにしましょう。
またクロスセル・アップセルは既存顧客だけでなく、新規獲得時にも活用できる考え方です。
LTV向上を目指すために、企業全体として取り組むのがおすすめです。
2.購買頻度を上げる
購買頻度を上げることもLTV向上では重要です。
特にLTVを算出する際に「平均購入回数」が要素として含まれるBtoC・C2Cのリピート商材を扱うビジネスモデルでは、購買頻度をいかに上げるかはLTV向上のカギになります。
購買頻度を上げるために重要なことは、顧客との接触回数を増やし、適切なタイミングでコミュニケーションを行うことです。
顧客頻度を高めるために具体的には下記のような取り組みを行うといいでしょう。
- 定期購入やリピートを促すステップメール
- DMやメルマガ配信、LINEでのメッセージ配信などのプッシュ型コミュニケーション
- ポイントカードやクーポンの活用
これらを適切なタイミングで行い、顧客との接触回数を増やすためには、データに基づいた分析がおすすめです。
過去のデータをもとに、顧客の傾向を把握し、顧客のニーズや購買意欲を見極めます。
過去のデータを正しく分析し、顧客が購入したいタイミングでコミュニケーションを行うことで、購買頻度の向上は成功します。
データの分析にはCRM(顧客関係管理)がおすすめです。CRMツールで顧客情報を管理することで、顧客のニーズを把握することができます。
データに基づいた顧客コミュニケーションで、購買頻度の向上を計っていきましょう。
3.顧客維持率を上げる
LTV算出に「継続期間」が要素として含まれるように、顧客維持率を上げることもLTV向上においては重要です。
顧客維持率を上げるためには、アフターフォローやサポートなどで顧客とのコミュニケーションを絶えず行うことが重要です。
顧客とのコミュニケーションでは、メルマガやLINEアカウントを使った定期的なプッシュ型コミュニケーションやコンテンツの発信がおすすめです。
コミュニケーションの例をいくつか紹介します。
- 購入・導入直後に商品・サービスへの満足度を上げるための情報提供を行う
- 買い替え時期にセールス告知を行う
- 継続利用を促す情報提供を行う(特に化粧品や定期購入商材など)
コミュニケーションだけでなく、顧客が継続しやすい商品・サービスを扱っているかどうかもポイントになります。客観的に自社の商品・サービスが継続しやすくなっているかを分析しましょう。
長期間購入してくれる顧客を育成できれば、他社への乗り換えリスクが減るだけでなく、口コミの拡散などの副次的な効果も期待できます。
顧客維持率を上げるためのコミュニケーションを行いましょう。
4.解約率を下げる
LTVの要素である継続期間を高めるためにも、解約率を下げる施策も重要です。
継続率が高くなる可能性のある顧客に対しては、長期的に商品・サービスを利用する必要性を伝え解約率を抑えましょう。
具体的にできる取り組み例は下記です。
- 優良顧客への特典や付加価値の提供
- カスタマーサクセスによる伴走(BtoB商材の場合)
また、解約・離脱率を下げるためには、過去の解約顧客のデータの分析は欠かせません。
解約したユーザーがどのような不満を抱いていたかを分析し、効果的な改善策を打ちましょう。
解約率を下げるためにも優良顧客の顧客満足度を上げる取り組みと、解約データに基づいた改善策の実施がおすすめです。
間接的にLTVをアップさせる
LTVを向上させるためには、顧客へのアプローチで売上を増加させるだけでなく、コストを削減することで間接的に上げる方法もあります。
直接的にLTVを向上させる施策を実行しても、コストが増大していてはLTVアップにはつながりません。
コスト削減ができないかを検討しましょう。
5.新規獲得コストを下げる
環境変化・ニーズの多様化などの要因もあり、新規顧客にかかるコストは増加傾向にあります。
しかし新規獲得コストがかかり続けていてはLTVは向上しません。
そのため新規顧客の獲得コストを見直す必要があります。
BtoB企業の場合、ツールを活用し、データに基づいたアプローチを行うことがおすすめです。
CRM(顧客関係管理:Customer Relationship Management)やMA(マーケティング オートメーション)ツールを使い、工数削減に努めましょう。
BtoC企業の場合にはマーケティング施策を見直すといいでしょう。
特にWeb広告経由の販路であれば、LPやバナーを最適化し、獲得効率の向上に努めましょう。
ニーズが多様化する中で、LPやバナーは顧客の変化に合わせて運用する必要があります。
たとえば
- LPのCVR(コンバージョン率)が低い
- LPのコンテンツの離脱率が高い
- LPの滞在時間が短い
- LPのCPAが下がらない
などのお悩みがある場合には、LPO(ランディングページ最適化)を行うといいでしょう。
しかし実際にLPOを行うとしても、「どう実現すればいいのか」「どのようにしたら成功するのか」を悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
以下の記事では、LPOの説明や必要なツール、成功のためのポイントを詳しく解説しています。
LPOに取り組みたいという方は合わせてご一読ください!
<参考記事>【事例付】LPOとは?基礎からおすすめツールも徹底整理
6.商品/サービス原価を下げる
LTV向上には、商品・サービスの提供にかかるコストを削減し、原価を下げることで利益率を上げる方法もあります。
原価を下げるためにできる取り組み例は下記です。
- 仕入れの見直し・価格交渉
- 制作コストの削減
- 経費削減
- 人件費削減
原価を見直す際には、客観的にコストカットできる項目がないかを分析することがおすすめです。
業務効率化を行うことでできるコストカットもあるでしょう。
しかし原価を下げることで商品・サービスの魅力が低減しては意味がありません。顧客ロイヤリティも下がり、LTVの改善につながらない可能性があります。
LTVを根本的に向上したい場合には、平均単価購入や購入回数増加などの直接的な施策に注力しましょう。
長期的にLTVアップさせましょう
本記事ではLTVのビジネスモデル別算出方法や必要性、有効なLTV向上戦略の紹介を行いました。
LTV向上、有効な施策の実行にはデータに基づいたマーケティング活動が重要です。
漠然としたデータで仮説を立てていてはLTVの改善につながらない可能性もあります。
LTVは一朝一夕で向上するものではありません。データをもとに顧客を分析し仮説を立て、正しい施策を行い、長期的に効果検証を行っていきましょう。
私たちナノカラーは制作会社でありながら、デジタルマーケティングの支援をベースにクリエイティブの提案をしております。広告クリエイティブの成果最大化を目指し、実施している取り組みの一部を公開・発信しております。