失敗しないLPOの【思考】と【実践】12選



LPOとは?

LPOとは?
LP(ランディングページ)を最適化すること。Landing Page Optimizationの頭文字をとったのがLPOです。では最適化とはつまりどういうことなのでしょうか?そこから理解しなければ正しいLPOが実施できません。

最適化とは?

最適化とは「制約条件がある中で複数の選択肢を組み合わせ何らかの成果を出すとき、その成果を最小または最大にすること」をいいます。一方、「最適」とは「最もよくあてはまっている」という意味です。(引用元
例えばカップ麺にどれくらいお湯を入れると一番美味しいかはそのカップ麺によっても変わり、食べる人によって好みも変わり、空腹感によっても満足度も変わることから、全てに適した正解がある訳ではありません。状況や制約によって、最も適しているという軸が生まれます。
LPにとっての制約条件の1つが集客経路です。広告媒体によっても、広告クリエイティブによっても、時期によっても、LPの成果やLP内のユーザー行動は大きく異なります。そのためLPOは限られた導線上での部分最適化なのか、全ての集客経路に合わせた全体最適化なのか見定めなければいけません。

LPOでよくいただく質問
・滞在時間やスクロール到達率は長い方がいいのか?
・LPの長さは短い方がいいのか?
・受賞歴など権威性は見せた方がいいのか?
・CTAは緑の方がいいのか?

LPOは非常に手法論(HOW)に偏った意見が飛び交いがちですが、先ほども書いた通り制約条件や目的によって最適の定義は異なります。そして根本的に抜け落ちているのが「誰に(WHO)」「何を(WHAT)」という文脈です。このWHOとWHATに対して最も適した表現や訴求はなんだろうか?果たしてユーザーは正しく情報を理解していたのか?本当は何に期待されていたのだろうか?この様な視点で仮説を立て定量データを用いて検証し最適化を目指すのがLPOです。

そしてデータとはユーザーが行動した痕跡です。データが全てとは言いませんが、データとして残された痕跡には必ず行動した理由となる感情や状況など、人それぞれの背景が存在しています。最適化とはこの人の感情に合わせたコミュニケーションを模索するという視点も非常に重要です。
とはいえ、LPOを実施されている現場の方のお話を聞くと、データの何を見ればいいのかわからない、テストをしたが何が変化したかわからない、仮説の立て方がわからない、検証ってどうすればいいのかわらかないというお声を多く頂きます。

正解はありませんが闇雲にデータを見ることもお勧めしません。ポイントを絞って分析し、解像度の高い仮説を生み続けることが、問題解決に因果関係のあるKPIの発見に繋がり、その積み重ねによって生まれるのが最適解です。

今回の記事では、LPOで実施するヒートマップ分析を中心に考え方などの【思考編】と普段の業務に取り入れやすい【実践編】をまとめていますので、ぜひ現場で役立てていただけるとうれしいです。

【思考編】
1.必ず仮説をたててからデータを見る

仮説を「探す」

多くのLPOで失敗してしまう方々はこのケースです。もちろん思いもよらない想定外の事実の発見や新しい切り口が見つかることもあります。ただし膨大なデータを解析し、高度な解析手段が求められてしまいます。結局なんだかわからないという結末を迎えてしまう原因は何か見つかればいいなあという気持ちで「仮説を探してしまう」からです。

仮説を「確かめる」

慣れていない方は主観でも構いません。もちろん願望でも大丈夫です。「きっとこの情報が読まれているだろう」「ここにタップが集中しているだろう」という仮説をもってデータを見てみましょう。ここを読んでもらえればCVしてもらえるはずだと仮説立てして、実際にCVしたユーザーはどんな行動したのかみてみましょう。仮説に対して事実を収集すると、二つの乖離が発見されます。そして「もしかすると?」という新たな仮説が生まれます。この様に仮説視点は「確かめる」という検証視点となり、どこを見ればいいんだろう、といった悩みも闇雲なデータ収集もせずに済みます。

とはいえ感覚的な手法論だけの仮説はNG

いまだにCTAの色はどれがよいのか?という議論が生じることがあります。視認性を高めるという意味では該当する色もございますが、これだけ世の中にLPやWEBサイト、ECサイトが存在している中でCTAの色はどうしていまだにバラバラなのでしょうか?それは各サイト毎に最適な色や形状があるからであり、どのサイトも現状が最適解だということです。仮に正解があるのであれば、楽天市場もAmazonも同じ色になっているはずです。この様に感覚的な模倣を仮説とするのではなく、重要なのは自社にとっての解を定め、検証し最適解を探し続けることです。

2.「点」の解析から「線」の分析を意識する

点の事実を線で結び再現性を高める

たとえばファーストビューの離脱率が高いとします。では単純に離脱率を軽減すればよいのでしょうか?それだけ見ていても何も変わりません。見るべき重要な点は離脱率とCVRの因果関係です。因果関係のない点の分析と改善をいくら繰り返しても不毛な時間が繰り返されてしまいます。
ファーストビューのA/Bテストをして、Aの方が離脱率が高かったとします。しかしCVRもAが高いということは実際にあり得ます。生じた事実に対して無仮説で反応してしまうと永遠と点の作業を繰り返す沼にハマってしまいます。

3.誰に対しての改善施策なのかを明確に

LP流入前と後のユーザーを事実と仮説を用いて把握

流入前

流入前には、競合商品の使用経験の有無や使用願望の有無、そして緊急性や情報摂取量、リテラシーなどを含めた「行動理由」となるその人それぞれの背景があります。 

流入後

流入後の行動から訪問者の行動事実と行動理由を仮説立てします。大きく分けて下記の5点があります。
1.訪問前からCVしようと決めていた層
2.LPを読み進めるにつれてCVしようと決めた層
3.検討したがCVできなかった層
4.検討したがCVしなかった層
5.検討すらしないと決めた層

広告データではCVした層としなかった層の絶対値と相対値が分かります。しかし、スクロール推移やCTAのクリック箇所などから細かく計測すると5つに分類されることがわかります。LPOで改善する目的は、CVした層を増やす為なのか、CVしなかった層を減らすためなのかを明確にすることで、改善箇所も検証ポイントも明確になります。

4.導線全体でLPをみる

LPだけの分析に集中してしまうと見えてきませんが、必ず流入前もセットで考える必要があります。

流入元によって情報摂取意欲や緊急性、リテラシーも異なります。仮に同じ人物でも初回訪問時と再訪問時で閲覧する領域も求めている情報も異なります。間違いなく1PVは実在する人が行動した事実であり、その行動には必ず理由があります。その紐付けがあることで、アテンションデータやスクロール到達率などの定量データは定性データとしての側面を帯びてきます。

市場に対して何を伝えたのかという広告クリエイティブに対して、ファーストビューからの離脱推移によってユーザーの期待値とのズレが計測できます。またCVユーザーのCTAクリック箇所によって購入決定に必要とした情報量、逆に離脱箇所によって見限られた要因がなんだったのかという、ユーザーの感情から生まれた行動の痕跡が見えてきます。

【思考編まとめ】
5.LPOが施策全体でどの位置でどの目的なのか俯瞰で理解する

点を線で見ていくには、商品/サービスとエンドユーザーがどう繋がっているのかを俯瞰で把握する必要があります。ユーザーとのタッチポイント毎に果たすべき目標と築く関係性が紐づいています。
LPOはランディグページというクリエイティブの最適化ではありますが、ユーザーの行動した事実と行動の理由を紐解き、顧客コミュニケーションのチューニングでもあります。

この様に全体を俯瞰で把握することで、より本質的な最適化が実現できると考えています。

実践編
6.比較によって発見が生まれる

ヒートマップを見る順番は明確です。

① 特異点を探る

ヒートマップの設定においてセグメントを設定しないプレーンなデータを収集します。気になる数値や状態が見受けられた際は、その箇所を隈なくチェックしていきます。事前に仮説をたてている事が非常に重要ですが、主観的な「ファーストビュー離脱率70%は多いな…」というレベルでも構いません。

②差分を探る

ピックアップした特異点を様々な角度から比較し、果たして本当に特異であったのかをチェックします。先程のファーストビュー離脱率70%を例に見ていきましょう。

例:期間別
前月は50%だったのに70%に上がっている。
では20%も離脱率が上がった理由は?離脱率の向上に伴い、他の箇所でも変動はあったのか?CVRの変化と離脱率との因果関係はあったのか?訪問者の特性が変わったのか?配信面で何か変化があったか?新しいバナークリエイティブで配信していたか?

例:流入別
流入の割合が多い2つの媒体別離脱率をみるとグーグル検索広告だと48%、YDNだと83%だった。
これは流入前の情報摂取への積極性の違いなのか?クリックした広告分やコピーによって、LPへの期待値が違っていたのか?離脱率が高いYDNは流入前にどんな期待値で訪問していたのか?ファーストビューとの乖離はあったのか?YDNの離脱率軽減はCVRに影響を与えるのか?

この様に①と②を繰り返し、仮説との差分によって新たな仮説が生まれ調査領域が明確になり闇雲な情報収集をせず、目的を持った分析が可能になります。

③裏付け

この領域はヒートマップだけでは計測できません。しかしファーストビュー離脱率が70%は高いのか低いのかは、比較対象によってという評価軸が異なることが①と②によってお分かりいただけたかと思います。その高い低いという評価は、絶対評価ではなく相対評価が基本です。
仮に離脱率が高まったとしても目的であるCVに影響がないなら、その離脱率の改善優先順位は低くてかまいません。
なぜその事実が生まれたのかを正しく判断するために必要なのが③のフローです。

⒎定点観測でCVRとの因果関係のあるKPIを探る

LP内には要所でCTA(Call To Action)と呼ばれる、目的(購入・申し込み・予約など)の意思がある方がクリックするボタンがあります。このボタンを押すと申し込みフォームなどに遷移する構造が多いことから、LPの機能としての役割はこのCTAのクリックが非常に重要な指標となります。

当然ながらCTAの位置まで訪問者をスクロールさせなければいけないことから、CTAまでの残存率は自ずとCTAクリック率に影響を与えます。表の様にCTAまでの残存率、そして各CTAのクリック率、滞在時間、CVRを定点観測することで、どの指標がCVRに影響を与えているかが可視化されます。

上記の様に継続的に定点観測していくと、CVRに影響を与えやすい箇所と影響度の低い箇所が明確になります。クリック率ではCTA2が最も高いのですが、他にもCTA3の残存率とクリック率がCVRにも影響が大きく流入前の期待値とLP序盤の情報の整合性が非常に重要だと気づけるデータとなります。

8.アテンションヒートマップの計測はツール仕様によって異なる

アテンションヒートマップとは、よく閲覧された箇所が赤くなり黄色→緑→青という順で色が変わることによって、訪問者がどこを注視したのかが可視化される便利なツールです。この一見同じに見えるアテンションヒートマップですが、ツールによって計測基準が異なります。

・相対的な計測
ページ内で最も読まれた箇所を基準の赤と設定し、相対的に黄色や緑など色が変わる仕様

・絶対的な計測
5秒以上読まれた箇所を赤、4秒で黄色、3秒で緑など絶対的な指標で色が変わる仕様

という、同じ色でもツールによっては同じ状況とは限りません。図のように、滞在時間が1分以上のLPと20秒ほどのLPでは同じ赤でも絶対/相対によって大きく意味は変わりますので、注意が必要です。ぜひご利用中のツールの仕様を把握して分析してください。

9.ユーザーの動きから流入前と流入後の心理を仮説立てる

項目4でも記載した通り、CV/非CVのユーザーにも様々なCV要因や離脱要因が背景に存在します。必ずしも上記の様な心理ではないにしろ、LPがユーザーにとってどう機能しているかを把握する1つの視点として捉えてみてください。

・スクロール到達率が低いが、序盤のCTAをクリックするユーザーはCVする意思が訪問前に形成されている。
・スクロール到達率も低く、訪問後すぐに離脱しているユーザーは、期待値と違ったのか検討すらもしていない。
・中盤〜後半までスクロールしてページ後半部でのCTAをクリックするユーザーはLPにある情報を得ることで検討し、CVを決めた。
・中盤〜後半までスクロールしてページ後半で離脱したユーザーは、検討したがCVしようとしなかった。
・CTAをクリックしたがCVしなかったユーザーは、状況や決済方法、価格など様々な理由でCVできなかった。

定点観測したデータをこの様なユーザー心理に落とし込むことで、LPが同様に機能していたかが把握できます。全てのLPで滞在時間やスクロール到達率の向上がCVに寄与するわけではございませんので、どの層のユーザーに向けた改善施策が良いかを判断するための材料として活用してください。

10.各要所のスクロール到達率目安とLP構成の役割

やはりデータをみてもよくわからない…という方には、LP構成が誰に対しての要素なのか、そしてそこまでのスクロール到達率の目安を目印にしてみましょう。

LPの構成に決まりや正解はありません。ただ、構成には大凡の流れがあります。それは下記3タイプのユーザーに向けています。
1. 今すぐCVしたい/する可能性がある人
2.もう少し検討して判断したい人
3.慎重に判断したい人

3タイプに向けた各所には目安となるスクロール到達率があります。当然ですが、流入経路によってこれらの数値は変わりますのであくまで目安として活用してください。

11.LPO改善箇所の見つけ方のコツ

LP訪問者のフェーズに対して必要な要素

商材によって異なりますが、例として認知→情報収集→比較検討→CV直前という道筋があるとします。その道筋の中で訪問者が離脱した要因を仮説立ててみると、離脱を防ぐ要因が浮かび上がってきます。

認知した瞬間に購入できる人はそもそも認知さえしてしまえばCVにたどり着きますが、その際に必要なのは訪問した瞬間の「期待値との一致」と「エンドベネフィット」です。

しかし、認知しただけでは決断できない人もたくさんいます。すると情報収集をするためにLPをスクロールします。そのまま比較検討に移行してもらうには「訴求や切り口」「代替え競合との優位性」「同カテゴリ競合との差別領域」「権威性」です。これは新たな発見や気づき、信じる理由などを与える要素群となります。比較検討を経たその先にはCV直前からCVまでの一押しが必要です。それが「お得感」と「不安解消」です。

たとえば、オファーエリアでの滞在時間が長くアテンションが高いがCTAのクリック率が悪いとします。この図でいうとCV直前→CVへの移行ができていない可能性があります。そうすると、一押しとなるお得感や限定感、または購入後に対する不安(送料は?いつ届くの?いつ返事が来るの?営業電話が鳴り続けるの?)を解消する情報を追加するなど、具体的な改善箇所と改善の打ち手が見つけやすくなりますので、ぜひ参考にしてください。

12.LPの構成を色分けしてみる

LPを構成する要素を上記の様に「情緒的判断材料」「合理的判断材料」に色分けしてみてください。LPによっては非常に偏りがあることが発見できますので、競合LPを分析する際もぜひ実施してみることをお勧めします。
たとえば美容商材LPの構成を2つに色分けして分類してみました。序盤は合理的判断材料が集中しており、購入するに値するかの判断能力がある高リテラシーユーザーを狙っている傾向があります。そのため後半に情緒的判断材料が集中しています。

では非CV(購入しなかった層)の平均スクロール到達率を見てみましょう。
この様に、非CV層はLP下層部までスクロールせず序盤の合理的判断材料の箇所で離脱していることがわかりますので、現時点での訪問者に対しては情緒的判断材料を優先的に提示した方がスクロールを誘発する可能性があるかもしれません。

この様にLPの構成を色分けすることでLPの特性を視覚的に把握しやすくなります。これを活用して媒体別や流入前のクリエイティブ別にデータ比較してみると、それぞれに適したコミュニケーションの傾向が掴めるかもしれません。

さいごに

冒頭にも書いた通り、LP制作もLPOも正解はありません。あるのは制約条件下での最適解があるだけであり、絶えず最適解を求め続けることが必要だと考えています。ただ制作現場では、あまりにも主観的な見解や好みによる仮説ともいえない何かによって実施されていることも少なくはありません。

その様な環境において事実数を多く担保することで関係者全員が、主観ではなく事実をベースに議論することが可能になり、事実と目標との乖離が課題として浮かび上がってきます。貴社のLPはファーストビューの離脱を防ぐことだけが目的ではないはずです。

当然離脱を防ぐことは有効ですし、アテンションが高いことも良いことです。他社よりも滞在時間が長いと知れば安心材料にもなるでしょう。しかし重要なのは、その指標が目標に因果関係のある指標なのかどうかです。その重要な指標を見つけるためには、やはり訪問した1PVが感情のある人であることを認識しなければいけません。

一方で、人の感情を数値化することはできません。目の前の人がどれほど喜んでいるのか、怒っているのかという感情は誰しもが分からないです。しかし、ツールを使えば必ず行動した事実が把握できます。そして事実には必ず背景となる理由があります。

わたしたちが企画する戦略も制作するデザインも、全て定量データから導き出された人の感情をベースに考え作っています。施策数を多く打つことで、結果から正解を探すという事も間違っているとは思いません。ただ弊社は全てのアウトプットに「なぜなら」という解を導きだすことが、再現性のある施策に不可欠だと考えており、その為には膨大なリサーチが必要となります。

LPOにおいても同様です。CVした人もCVしなかった人も、検索広告やDSP広告から流入した人も、初回訪問者も再訪問者もひっくるめた平均データを見るだけでは、新たな発見は生まれません。比較対象がある事で気づきと仮説が生まれます。

売り手の拘った機能訴求だけではユーザーが反応してもらえない時代だからこそ、LPというセールスコミュニケーションツールを介して、今一度改めて顧客に向き合っていく機会にしていただけると幸いです。

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